一度、空気が凍り付くその瞬間だけでいい。
深く抉るように貫いてみたい。そう思ったが生憎自分の得物は斬れるようなものではなかった。
ならば、こうしよう。
冷たいその手がもう刃を握ることが出来ないくらい、粉々に砕いてしまいたい。
そうしてしまいたいけれど、あんなにも綺麗な君をもう見られないのかと、もう刃を交えることもないのかと思うと、それもひどく惜しい。
何よりそうしてしまった後に生きていられるのかもわからない。
きっと君を慕う彼は、一番に私を殺しに来るのだろう?
「景勝殿」
「…ねぇいつか、一度でいいから」
本気で首を取り合いませんか。
かつての当主同士がひとつの地を巡ってそうしていたように。
「喜んで、お受けしよう」
ほら、やっぱり君も同じことを考えていたのでしょう?
だって私達はどこか似てるもの。
考えるだけで震える