※表記とは違って景勝のみ







「降る、か」


春の終わり、夏の始め、この国には「梅雨」というものが存在する。一月近くもの間、雨が降り続くその季節。

身体が雨を拒否し始めたのは、ここ二、三年前からだろうか。


『与六は顕景様の傘です』


その傘を無くしてしまったから、余計に雨を恐れているのだろう。
きっとまた、雨は何か大切なものを奪っていく。もし次があるのなら、それは恐らく、定勝だろう。


「定勝、は、やれぬ…」


急に降り出した雨に思わず吐き気がする。
湿気を吸ってへたりとした髪に手をやれば、随分伸びたものだと改めて思う。与六が伸ばして欲しいと、最後に望んだこと。


(これで、お前は満足か…?)


伸ばした手が雨に濡れる。
この手が取られるのは、果たしていつだろうか。







渡せないものはひとつだけ



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