※景明←定勝表記ですが、出てくるのは定勝のみ
「平八…」
書簡に目を通している間、ふと頭を過ぎったのは今から数年前に亡くなってしまった、大好きな従者。
身体は決して強くなく、寧ろ弱いくらいなのにそこらの者よりずっと強くて優しくて。
「どうして、」
大好きだった、その気持ちに嘘は無いけれど、これが恋や愛の「好き」かと問われれば、わからないからきっと答えられない。
その答えを出すには、当時己はあまりにも幼過ぎたから。
「死んでしまった?」
あまりにも早く、亡くなってしまった。二人一緒に居られた期間はとても短かった。
だがその間は確かに幸せで、一日一日がとてつもなく大事だった。それは、子供ながら常に思っていたこと。
体調の良い日は多いとは言えず、その僅かな合間に二人で出掛けたりもした。沢山のことを教えて貰い、わからないことは共に学び、何か出来たら一緒に喜んだ。
(平八、もう、手が届いてしまうよ)
永遠に増えることのないその年齢に、もう直ぐ追い付いてしまいそうだ。
そしてそのまま、必然的に追い越してしまうのだ。
変わらない数