やまびこ+なすの







「やっぱり、なんだかんだあおばに一番似てるのはお前なんだな」

乗客の皆様から募集した写真の数々。もちろんそこには俺自身も、そして俺が誰よりも信用し信頼した相方のあおばの姿もあった。
かつての自分と同じ制服に袖を通し緩く癖のある髪を風に揺らしつつ、さながら一枚の絵のように無駄の無い動きで挙げられた腕は確かに北を指していた。

「私には、あおばが目標で、憧れで、全てだった」

思い返せば俺がなすのと顔を合わせたのは、彼が来たと知らされてからずいぶんと後のことだった。その間俺はまだ小さかったつばさにかかりっきりで、反対にあおばが来たばかりのなすのに付きっきりだったらしい。
なすのはあおばの区間を分け与えられて生まれた新幹線だ、似ていても何等不思議は無い。ただ時々、似ているのではなくあおばそのものがそこに居るような感覚に襲われる。何気無い一言が、仕草が、彼を彷彿とさせる。

「でもどんなに努力しても、私はあの人にはなれない。もちろん、つばさもね」
「どういうことだ?」
「気付いていないのなら、知らない方がいい」

引っ掛かったなすのの言葉をもう一度頭の中で転がしてみるが、それでも答えには辿り着けなかった。だから問い質した、どういう意味だ?と。
答えることを渋っていたなすのが、ゆっくりと口を開く。

「…やまびこ自身気付いているはずだよ。誰も、あおばの代わりにはなれないって」
「当たり前だ」
「なら、つばさにあおばを求めるのは止めなよ」

「彼は確かに君の相方だ。でも、彼は根本的に東北新幹線じゃないんだ」

突き刺さる言葉、フラッシュバックするあの日の記憶。
(…やまびこ、)
不意に聞こえた声に驚き、慌てて後ろを振り返るがそこには何も無い。でもそれはどんなに時を経ても忘れるはずがない、誰よりも心地良いあの声で。

「だから早く見付けて…本当のあおばを」

泣きそうな顔をしてそう懇願するなすのの姿が、何かと重なる。
それは、最期に見たあおばだった。




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