東北+上越







「ねぇ東北、」

「いつか全てを失う可能性を持った壱か、いつか全てを手に入れる可能性を持った零」

「君なら、どっちを選ぶ?」

上越はいつだって唐突で内容が大袈裟な気がする。時々話す内容について行けなくなりそうになるのだが、無下にすることも出来なくてとりあえず考えてみる。

「…壱、かな」
「そう言うと思った」

同じ質問を上越にしたなら、彼はきっと零を選ぶだろう。いつか失ってしまうなら、始めから何も要らないと突き返すような、そんな性格だから。

「でも、手にしている壱を失わないように、必死に努力する」
「いつか来るその日に怯えながら?」
「もしかしたら、その日は来ないかもしれないだろう?」

いつか、なのだから。

無意識に掴んでいた上越の手は、小さく震えていた。本当に欲しいものを欲しいと言えない、それを自分は知っているから。
自分が与えられるものなら与えてやるのだが、中々に察する能力があまり良くない。山陽とかならばすぐに気付いてやれるのだろうが、生憎自分はそんなに器用に出来てはいないのだ。

「…東北は狡い」
「時にはそれも必要だ」

すぐに気付いてやれないから、目を離さないように手を離さないように、どうにか彼を繋ぎ留めておく。失わないように必死になっている壱はお前だと言ったら、上越はどんな顔をするだろう。
掴んだ手を引いて一歩分距離を詰める。笑っていたはずの表情は酷く泣きそうだった。

「君には更なる北への希望が続いているけれど、僕はもう終着なんだ」

「選ぶことなんて許されない」

はっきりと言い切った上越を抱き寄せ肩を貸す。好きなだけ泣けば良い、そう言うことは簡単だけれど、そんな言葉何の意味も持たないから喉の奥に留めておく。だから黙って彼の頭に手を添えた。

ほらこんなにも近くに在るのに、本当は何を言いたいのかわからない。
(俺たちは"双子新幹線"なのに)




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