やまびこ+あおば







「どうして君は、そう無茶ばかりするんだい」

事務処理をしながら次走る車両について連絡を受け、電話対応しながら書類の上にペンを走らせる。カチャンと受話器を置いた瞬間、すぐさまジリリと音が鳴り響く。
慌てることもなく再び受話器を取れば、そこから聞こえて来たのは予想していなかった駅員の声。

「だって、」
「君が倒れると私にも影響が出るんだ」
「…ごめん」

慌てていたのはむしろ駅員の方で、声から察するに突然のトラブルに戸惑っていたらしかった。
『せ、仙台駅でやまびこさんが倒れたんです…!』
『とりあえず折り返し大宮まで走らせなければいけないので、一先ず運行システムをあおばさんに繋がせてもらいました』
そう言われた途端全身を電気のようなものが駆け抜けた。本来予定していなかったものが繋がれたのだから若干腕に痺れが残るが、仕事に影響が出るほどではない。

「仙台までなら私だって走れる、もっと頼ってくれればいい」
「盛岡までだって走れるだろ」
「始発最終だけだからそっちはあまり得意じゃない」

結局その後も何本かは自分にシステムが繋がれたままで、速達と各停の両方を走らせることになってしまった。走り慣れない盛岡までのレール、慣れない所為か余計に疲れた。
何度目かの往復を繰り返した後、仙台までやまびこを迎えに行って今に至る。

「…それより、もう大丈夫なの?」
「結構休ませてもらったし、へーき」
「うん、ならいいや」
「遅延運休出さなくて済んだのは本当あおばのおかげ、ありがとう」

へらりと笑う彼を見たらもう済んだことだしいいか、と思ってしまった。
東北新幹線の主力は、あくまでもやまびこだ。距離も長く本数も多い。私は、彼の間を縫ってゆっくりゆっくりと走るだけ。

「ほら仕事仕事!この前のトラブル報告終わってないよ!」
「えぇー」
「私は今日の君の分の報告書作らなきゃいけないの。やまびことして走ってはいるけど、走らせたのはあくまで私だから」
「今日の反省文書かされるかなー」

それでも、それでもやまびこの隣を走れるのは嬉しかった。自分以外のシステムを繋がれても、止めずに走らせることが出来たのも嬉しかった。
きっとそれは、相手がやまびこだからなんだろうけれど。




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