はやぶさ+はやて+やまびこ
「はやて、お揃い」
「貰っていいの?」
「どうぞ」
そう言って彼がくれたのはE5系ストラップ。僕の携帯にはこまちちゃんのE3系ストラップしかついていなかったから、後輩であるはやぶさのストラップを貰ったのは純粋に嬉しい。
「つけていい?」
「うんっ」
「ありがとう、すごく嬉しい」
今度は彼に僕のE2系ストラップをあげよう。きっと喜んでくれるはずだから。
そんなことを考えながら、はたとはやぶさの携帯には何もついていなかったことを思い出す。では、何がお揃いなのだろう。浮かんだ疑問に首を傾げれば、彼は嬉しそうに笑った。
「はやて、今度から俺のE5系使うでしょ?だからお揃い」
『E5で行こう。』そのフレーズが頭を過った。そうだ、今までははやぶさだけがE5系を使って運行していたが、今度からは自分の所にも入るのだった。
「俺、はやてと同じなのすごく嬉しいんだ!」
見た目の割に子供っぽくはしゃぐはやぶさがあまりにも可愛くて、ついつい笑ってしまった。そんな僕を見て彼はきょとんと目を丸くしていた。
その時、コツンとはやぶさの頭を誰かが殴った。
「残念だが俺のトコにもE5が入る」
「やまびこ…?」
「さすが大御所!これでまた全種制覇だね!」
「うるさいはやて!誰が大御所だ!」
「…あ、やまびこのこと忘れてた」
やまびこは怒ったけれど、僕からすれば十分大御所だと思う。彼はそれこそあさまのE2系0番台以外は全ての車両を使用しているのだ。
それだけやまびこの歴史は長い。
「俺のこと忘れるなんて、ずいぶんいいご身分じゃないかはやぶさ」
「だってはやてと一緒なのが嬉しくて嬉しくて…」
「ごちゃごちゃ言い訳するな!」
何故か突然、昔々にやまびこに言われた言葉を思い出した。
『俺は、絶対に盛岡より北には行かない』
『だからその先は、お前に任せた』
『はやて』
盛岡から八戸まで。今では更にその先にある新青森まで。
新青森までの長い長い距離を走る新人のはやぶさと、盛岡までの走り慣れた路を走るやまびこ。彼らを近付けるE5系。
不意になんだかとても微笑ましくなって、二人の隣で声を上げて笑った。
「はやて、頭打ったか?」
「な、何!?何がおかしいの!?」
「いや、違うよ。何でもないから」
こんな先輩と後輩を持つ僕は、何て幸せなんだろう。