西武新宿+西武拝島







今、傍に誰か居ないと危ない気がしたから。だからここに居たのはある意味、幸いだった。

「今そっち戻れないから、小川辺りのこと任せていいか?」
『連絡は来てるからわかってる』
「ありがとう」

拝島線、新宿線の事故により運転見合わせ。
本当は自分が振替輸送の手続きに頭を下げて回ったり、乗客の誘導やダイヤ調整などを行わなければならない。でもそれを国分寺に頼んで、自分は今別の場所に居る。

「新宿、平気?」
「頭痛いし気持ち悪い」
「少し休んでなよ、やっておくから」

顔を洗って来た新宿に替えの制服を渡して、自分は状況確認と回されて来た電話対応、それと駅員への指示を出す。
ちょうどラッシュの過ぎた比較的人の少ない時間だから、早ければ新宿線は一時間かからずに復旧出来るだろう。自分の線は直通こそ出来なくとも、小平での折り返し運転でまもなく再開出来ると思われる。

「ごめんな、拝島まで止めて」
「新宿が悪いわけじゃない。それに、あっちのことは国分寺に頼んであるから平気」
「最近多すぎるだろ…何だよもー…」

二日程前にも新宿線で事故があった。立て続けにこういったことが起こると、路線や車両だけでなく駅員の負担も大きい。
しかも今回の被害は彼の路線だけに収まらず、自分の路線までを止める結果になった。普段なら遅延や一部運休にはなっても、運転見合わせまでにはならない。今回は何かが違った。

「営団と東武と、とりあえず一通り回って状況確認もするから出てくる」
「俺も行く。てか俺が行かないと、」
「駄目」

「すぐ戻るから、新宿は休んでること!」

西武の本線のひとつである誇りと、事故の当人である責任感。それらが彼を突き動かすのだろうけど、まだ足下がふらつく状態では危険極まりない。
本当は傍に居てあげたいのだが、そんなことでは仕事は増える一方である。やらなければならないことがあるから、動ける自分は働かなければ。

「拝島に怒られたー」
「もう行くからな」
「けどさ、お前こそ倒れんなよ?」
「そんなことしない」
「拝島が倒れたら国分寺に怒られる」

その言葉に「これ以上仕事増やすな!」と怒る国分寺の姿が容易に想像出来てしまって、思わず笑ってしまった。

「確かに」
「だろ?」
「じゃあそれは気を付けるよ」

突如音を立てた携帯を取って部屋を出た。




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