西武池袋+西武秩父







「曼珠沙華が枯れる頃、」

「冬がやって来るよ、池袋」

高麗駅で両手いっぱいに真っ赤な曼珠沙華を抱えた秩父はそう言った。
毒々しいくらい鮮やかなその花は、柔らかく笑う彼には似つかわしくないと感じるほど、目に痛い色を主張する。

「曼珠沙華…死人花か」
「常世と現世を繋ぐ、道標だよ」

ひとつ、ふたつ。自分が歩いた道に曼珠沙華が咲いていく、そんな夢を見た。
これは常世に向かっているのか、それとも現世に向かっているのか、西も東もわからない道。そこを一瞬、人影が視界の端を横切って、でもそれがあの方だとわかるのに時間は要らなくて。追いかけようとしたその時、誰かが私の腕を掴んだ。

「――池袋っ!?」
「西武、秩父…」
「話してたら突然ふらついたから…体調悪い?」
「平気だ、何でもない」

心配して触れて来る手は、そうきっと夢の中と同じ。自分には無い、温かい手。
この手はきっともう何も掴めない。失ったものにもう一度触れようともがくばかりで、結局何にも触れられない。

「手、冷たい」
「普段からこんなものだ」

私は何も掴めないのに、彼が私を掴まえてくれる。越えてはならないその線を跨ごうとした時、それ以上は駄目だと引き戻してくれるのだ。夢の話も、恐らくそのことが言いたいのだろう。
無意識に伸ばした手は、彼の髪に触れてそのまま頭を撫でた。

「何かあった?」
「何も無い…ただ、」


「ただ、お前が居て良かった。そう思ってな」

想いを願いに、願いを祈りに昇華させて、まだ見ぬ明日へと歩き出そう。
(一人じゃないなら、出来るはずだから)




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