あおば+なすの
「なすの」
「君は東京と栃木、そして福島を繋ぐ大事な子だよ?」
この人の優しくて柔らかい声が好き。
頭を撫でてくれる温かい手が好き。
「あおば」
「うん?」
「お披露目したら、一緒に走れる?」
早くあおばと走りたい。早く東北新幹線の一員になりたい。早く、彼の役に立ちたい。
毎日そればかり思って勉強をして、練習をして、時に上手く出来なくて諦めそうになっても、その夢があったから頑張れた。
「いつも、というわけにはいかないけれど…きっと走れるよ」
「ほんと!?」
生まれて程無くした頃、最初に教えられた。
自分は東北新幹線あおばの一部区間、及び系統を分け与えられて造られたのだと。各駅停車にて東京から那須塩原、また郡山までを走る近距離新幹線。
自分の元にして東北新幹線の各駅停車タイプであるあおばを、兄のようだと慕うのにそう時間はかからなかった。
「やまびことつばさも居るし、心配ないさ」
「私は、あおばと走りたいです」
あおばの相方、もう一人の東北新幹線やまびこ。そして山形新幹線のつばさ。何度か顔を見たことはあるが、きちんと話したことはまだ無い。
会わせてもらえるのは、それこそあおばだけだった。
「私も、なすのと走りたいな」
その言葉が嬉しくてぎゅうと抱きつけば、彼も同じように抱き返してくれた。
あおば、あおば。私の、大好きな人。
「私の分まで、長く長く愛され走り続けるんだよ?」
「うんっ!」
でも私は、その時の言葉の意味を理解出来ていなかった。
あおばのカウントダウンは、もう既に始まっていたのに。