函館+南北
※開業前の顔見せみたいな
国の奴らはみんな、嫌いだった。
馴れ合う気なんて毛頭無かったし、そういう仕様として造られてもいなかった。
「札幌市営地下鉄南北線、です」
「はじめまして、日本国有鉄道函館本線です。よろしく」
差し出された手を握るでも振り払うでもなく、ただ無視した。
へらりと笑う目の前の奴が唯一の国鉄での乗り換え可能路線。あとの乗り換え可能な路線は同じ札幌市交通局の市電だけ。
「御国の狗は嫌いだ」
「厳しいことを言うね、君は」
「そうか」
「でも、俺たち初めから国鉄じゃないし、あんまりそのつもりは無いけど」
国鉄側の話はあらかじめ市電の人に聞いていたから、大まかな流れはわからなくもない。彼だって国有化する前はもちろん名前だって違ったのだ。
「でも君にしたら同じかもしれないね」
「だって、国有化したのはもう半世紀以上も前の話だもの」
函館本線。北海道における最古参の鉄道路線。
何故、笑っていられるのだろう。生まれに誇りを持つのなら、何故今の位置に甘んじていられるのだろう。
意味がわからない。わかることはやっぱり、国の奴らは嫌いだということだけだった。