西武国分寺+西武拝島





※何か、私がやりたかっただけ






「ほら、そこ座ってこれ持つ」

風呂の用意をしていざ浴室へ向かおうとした所を国分寺に捕まえられた。
渡されたのは昨日の朝刊、目の前には普段使わない鋏と櫛を持って構えている国分寺。

「これでいい?」
「ん、じゃあそのまま動くなよ」

ふたつ折りにされていた朝刊を一回開き、顔の下まで持ち上げる。
流している前髪に触れる彼の指。伸ばし始めたのは、一体いつからだっただろう。

「最近忙しかったから結構伸びたな」
「そう、かな…?」

あまり気していないから自分のことなのに気付きもしなかった。いつも国分寺が先に気付いて、こうして切り揃えてくれるのだ。
はらはらと新聞の上に落ちてくる髪は、思ったより痛んでいなかった。

「拝島、」
「何?」
「終わったぞ」

切られた髪の長さを見てもあまり伸びたとは思わないけれど、彼が好きでやってくれるからまぁいいかと思うことにした。
いつものように髪を流して正面を見れば国分寺が満足そうに笑うのがわかる。

「それで丁度だろ」
「じゃあ風呂入るから」


「国分寺、ありがとう」

前髪を伸ばし始めたのがいつなのか忘れてしまったけれど、彼が切ってくれるようになったのもいつからだっただろう。
ぼんやりそんなことを思いながら少し上を向いたら、目が合った。

「どういたしまして」

でもお互い嫌じゃないから、きっといつまでも続いているのだと思う。
少し短くなった前髪を摘まみながら再び浴室へと向かった。




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