函館+室蘭※
※まだまだ計画上での話です
※やっぱり捏造ばかり
※あくまで創作上での見解です
あんな奴に、渡してたまるか。
「函館も、小樽も札幌も何もかも、」
「高速鉄道なんかにやるものか」
突然この北海道にやってきた新幹線計画。早いことにそれは、開通予定までもう五年を切った。
始発駅予定だった東北新幹線の新青森駅延伸開業、念願の全線開通。次は、ここだ。
「計画上は新青森ー新函館だっけ?なら君より海峡線の方が重要じゃないか」
「今は確かにそうかもしれない、でも問題は今後だ」
「新小樽に、札幌…でしょ?」
自分にも少なからず、北海道の初代鉄道としてのプライドがある。
採算が取れなくて買収、吸収合併、廃止にされた鉄道会社も路線もたくさん見た。廃止区間が出来て悲しみ嘆いた路線もたくさん見た。
「どうなるのかはまだわからない…でも本当は、この大地に走らせることさえ虫酸が走る」
「珍しくずいぶんと言うねぇ、函館」
この大地に高速鉄道なんて要らない。道民に負担を強いるだけの、採算の取れない路線は要らない。
俺たちはその激しい生き残りをかけた戦いに勝ったから、今ここに立って、走っているのだ。余所者なんかに、このポジションは渡せない。
「お前は相変わらずだな、室蘭」
「お褒めの言葉ありがとう」
カシャン、と小さな音を立て、室蘭が紅茶の入ったティーカップをソーサーに戻す。
「…それで、どうするつもりなの?ねぇ、官営幌内鉄道さん」
「妥協はしないさ、絶対に」
「おやおや、それは怖いねぇ」
「お前だってそうだろう?北海道炭礦鉄道、そして長輪線」
僅かに室蘭の肩が震えた。そう、今ここに在る俺たちは、みんな何かしらの犠牲の上に存在している。
それは元は複数あった路線をひとつに統合し改称した結果だったり、造ってくれた鉄道会社が買収されて初めの名前を捨てたり、路線によってさまざまではあるけれど。
「私だって長万部のことがあるからねぇ、決して快くは思っていないよ」
「ならば、」
「でも私たちは所詮路線のひとつ。お偉い方々には従うしかない」
「そうでしょ?」
にこりと笑った室蘭を相変わらず敵には回したくないなぁ、なんて思った。
でも確かに、俺たち路線がどんなに抗おうとも、利用してくれる地域の人々が認めればそれは決定事項なのだ。
「全ては道民のために」
「全てはこの地を愛す人のために」
まだ時間はある。どうなるのかはわからない。
でも、やれるだけのことはやらなければ。
窓の外は、雲ひとつ無い青空だった。