東北地方組





※元ネタは電車内中吊り






「え、なんで俺一人太平洋側に配置されてるの?」

夏は東北で涼もう、というキャッチコピーの広告。右下には東北地方の地図と俺たちの写真が入っている。
地図の日本海側に上からはやて、やまびこ、こまち、つばさ。そして太平洋側にぽつんと俺が一人。
ここになすのが居ない理由はわかる。彼は近距離タイプのため、東北地方をほとんど走らないからだ。

「はやて、俺はやてと一緒がいいよ」
「僕とは併結出来ないでしょ」
「でも一緒がいい」

甘えたことを言いながらはやてを掴もうと伸ばした腕は、悲しいことに空を切っただけだった。

「こまちちゃん…?」
「残念はやぶさ君、今回のはやて君は私のものだから」
「えー、ずるい…」

得意気に笑うこまちは楽しそうで、やっぱり割り込めないなぁ、なんて思った。はやてが生まれた時からこまちは隣に居るから、仕方ない。
そして割り込めないと言えばもう一組。

「つばさ、この前はごめんね」
「そうだよお前の所為で俺遅延したんだからな!」
「だから謝ってるだろ?」
「開き直るなやまびこの馬鹿!」

正直言うとこっちの方が割り込めない、やまびことつばさの関係は誰より長いらしいから。初代東北新幹線と、初代ミニ新幹線。

「馬鹿って酷いなぁ…まぁでも俺の所為だからいいけど」
「お、珍しく素直だな」
「てかつばさぁ、米沢牛弁当はー?」
「やまびこが牛タン弁当買って来たらな」

この二人はきっと違う世界を生きているんだろうな、と時々思う。特にやまびこは国鉄生まれだから。
(まぁ国鉄というものが、俺にはまだよくわからないのだけど)




「さて。ポスターにもあるけど、僕らが東北を繋げるんだ」
「俺らが走れば、誰かが繋がるからな」
「私たちを必要としてくれる人が居る限り、走り続けるの」
「それが、俺たちなりの支援だからさ」





「ねぇ、はやぶさ」

「今はまだ歩き出したばかりだけれど、どうか悲観しないで欲しい」

「ここは、僕たちの誇りなんだ」

知ってるよ。俺がデビューする前からずっと話に聞いていた、みんなが走る東北地方。海を山を愛し、唯一在来と走る新幹線。
早く自分も走りたいと、何度願っただろう。みんなが走った線を、はやての後ろを、走りたくて仕方なかった。

「大丈夫だよはやて。俺は、復興の証になるんだ」

俺が最高速度320km/hで新青森まで駆け抜けたその日、その瞬間が、復興の証になる。

「無理はしちゃいけないよ。皆一緒じゃなきゃ、意味が無いんだから」
「うん」

今はまだ、名も無い相方を待ちながら一人はやての後ろを走るのだけれど、二人になったらきっと今とは違う世界が見えるから。
みんなが笑って、みんなが怒って、みんなが泣く。そんな日常を、この先の未来へ求めて。

「走るよ、俺は。この大地を」

(そう、今度は俺の番だから)




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