武蔵野+京葉





※多大なる捏造ばかり
※ただ武蔵野と京葉をセットで置きたかっただけです






東京駅は時々、気持ち悪くなる。
理由もわかってる。

ふらりふらりと人を避けつつ、なんとか事務室まで辿り着こうと出来るだけ通行人の少ない道を歩く。でもやっぱり気持ち悪くて、壁に倒れ込みそうになったその時だった。

「っとに、何やってんだおめーは」
「…武、蔵野…?」

ぶつかりそうになったすんでの所で腕を掴まれ、とりあえずずるずると事務室へ連れて行かれる。
ぼんやりとした視界に映る、武蔵野のオレンジを頼りに何とか足を運ぶ。

「お前のトコ、今は運行問題ねぇのにどーしたんだよ?」
「ごめん、すぐ走るから…」
「…またいつものか?」

ズキリと頭が痛む。
東京駅が少し苦手なのは、自分の居場所が無くなったような気するのと、見えない影に飲み込まれそうな感覚に襲われるから。
(東京駅の僕の地下ホームは、計画されていた「成田新幹線」のホームの予定だったから)
不意に込み上げる吐き気を必死に抑え、ゆっくりと深呼吸を繰り返す。そんな僕を見て、武蔵野は大きな溜息をついた。

「ばーか、お前のなんだから胸張ってりゃいいだろ」
「ふえ…?」
「ここはお前の、京葉線のホームなんだから」

「昔のことそんなガタガタ言う奴なんかいねーし、大体成田だって何も言わねーだろうが」

昔から思ってた、武蔵野は魔法使いなんだって。
彼の言葉は時々、僕にはキラキラして聞こえる。

「うん…大丈夫、だよ」
「ったく、後で舞浜まで送ってくから大人しくしてろよ?」
「君にしては珍しいね、明日は運休かな?」
「うるせーな、お前が止まると俺が困るの!京浜には怒られるし東上に振替頼まねーとだし!」
「大変だね」
「…いいからとにかく遅延出さねーようにだけ気をつけてろ」

携帯は未だに音を立てないから、どうやら大幅な遅延などの悪影響は出ていないらしい。一先ずは安心、千葉組の人たちにまで迷惑はかけたくない。

「武蔵野、」

「ありがとう」



「どーいたしまして」

ひらひらと手を振りながら出て行く武蔵野の背中を眺めつつ、僕はソファーに倒れ込んだ。しばらくの間、瞼の裏にあのオレンジ色がちらついていた。




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