札幌組





※過去捏造
※一部用語なども捏造、注意!






この地下に、新しく路線が出来るのだと駅の事務所はその話題ばかりだった。
北海道初の地下鉄、札幌市交通局が管理する路線らしい。

「何でも、札幌オリンピックに間に合わせるように造るんだと」
「だから真駒内までなんだろ」
「地上部分もあるって、聞いたよ」

他の職員が置いて行ったのであろう建設計画案には、南は真駒内から北は北24条までを走り、ここ札幌駅で在来との乗り換えを可能にするらしかった。
書類には地上部分は雪に配慮してシェルターを用いることまで書かれている。

「あちらさんは「さっぽろ」駅なんだねぇ」
「函館、札幌駅は本拠地なんだから頑張れよ」
「残念。俺の本拠地は函館駅と決めているのでね」

「…でも、第三軌条で中央案内軌条だったら……新しい子は独りぼっちだ」

札沼がぽつりと零した言葉に、函館と千歳が改めて文面と設計図案に視線を落とす。

そもそもこの書類がここにあるということは、粗方の工事が終わり札幌市交通局が情報の解禁を許した結果である。しかしそれでもまだ機密事項には変わりないため、とりあえず接続駅である札幌駅及び函館本線にだけ渡された。
そこに記されているのは、明らかにこちら国鉄との接続を望まない車両形式。

「これじゃ乗り入れは出来ないよなぁ…」
「交通局はその気が無いんだろうが、札幌だけでの乗り換えか」
「……あ、もっと北まで延びたら、新琴似とかでも乗り換え出来るかも」

地図の上をするすると札沼の指が滑り、北24条駅から北に路線を延ばす。それを仮定してみると、確かに新琴似ー太平間に近い。
先にこの一帯を走っている市電鉄北線は、新しい地下鉄の開業に伴い札幌より北部の区間が廃止されることになっていた。だからその代わりを果たすには、やはりもう少し延伸の必要があるだろう。

「とにかく!頭は違うけど仲良くすること!」
「はぁ」
「はーい」

解散!と函館が号令を出せばそれぞれがいつの間にか決まった仕事につく。札沼は書類の整理、千歳は食器類の片付け、函館は簡単な部屋の掃除。それが終わると各自の持ち場に戻るのだ。
二人が出て行った部屋で一人、札沼は再び書類に目を通す。そしてぽつりと一言。


「…待ってるよ、高速電車南北線」



(君に会えるのは、もう少し先の話だけれど)

たくさんの夢と期待と、ほんの少しの不安を乗せて君は走るんだ。
君の走った線が、誰かの走る線になるから。




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