はやて+はやぶさ
「はやて、はやて」
「早く君と走りたいよ」
航空機のファーストクラス並みと称されるグランクラス。それを有しながら東京〜新青森間をはやてややまびこと共に走るべき俺はまだ、外の世界を知らない。
「はやぶさはゆっくり準備してて」
「それまでは、僕とこまちで今まで通りやってるから」
東京〜新青森間を通る途中、盛岡までの距離をこまちと共に走るはやて。
こまちは小さくて可愛い子。だから在来線に乗り入れまでしている。
(新幹線なのに踏切を走るこまち、見てみたい…)
「でもはやて…八戸から新青森まで伸びたから大変でしょ…?」
でもまだ外を、規定路線を走らせては貰えない。お前は春まで外には出せない、そう東北上官に言われた。
新型E5系、新区間八戸〜新青森。お披露目の発表会ではたくさんの人が俺を期待の眼差しで見つめた。
「はやぶさ心配しすぎ、それよりサービスの向上に力を注ぎなよ。折角のグランクラス、期待外れなんて言われたくない」
「はやてが?」
「だってはやぶさのこと、悪く言われたくないもの」
はやてもこまちも優しい。何も知らない俺は、この優しさにただ甘えるばかりで。
他は知らないけれど、この東北が俺は好き。雪と共存し、在来と手を取り合う。
「…頑張る」
「うん、そうして」
この手も、いつか誰かと繋げますように。