銀座+南北
※自分だけが楽しかった自己満話
愛しい愛しい、僕らの末っ子。
「…銀座ぁ…はい」
「お使いありがとう、お菓子そこにあるの食べていいよ」
「疲れたぁー、大体何あの移動量!」
東西の所へ書類を取って来てもらって、更にはその足で有楽町の所に連絡事項を伝えてもらった。飯田橋で上手くかち合えばいいな、なんて思って頼んだはいいけれど、実際そんなに上手くはいかなかったらしい。
溜池山王で頼んで、南北は飯田橋に向かうために浦和美園行きに乗った。でも東西は丁度西船橋に居て、有楽町は東武東上線との直通の関係で朝霞に居たんだとか。
つまりは端から端までぐるっと走って、しかも最後はこちらの都合で上野まで届けてもらったのだ。
「紅茶は、ミルクティーでいい?」
「うー…砂糖多めで」
「お菓子甘いのばっかりだよ?」
「じゃあ…ストレートがいいなぁ」
「うん、ちょっと待ってね」
ストレートなら今日はこれにしようかと戸棚から出した茶葉をポットに入れ、適温に冷ましたお湯を注ぐ。感覚的にもう蒸らす時間はわかっているから、その間に机の上を簡単に片付けてしまう。
時間になったら南北のマグカップと自分のティーカップへ均等に注ぎ、差し出すと同時にどうぞと声をかける。
「適温にはしてあるけど、もしかしたら少し熱いかもしれないよ」
「ん、ありがと」
出しっぱなしにしておいたら全部食べられてしまいそうだから、この前空いたばかりの缶へ適当にお菓子を詰めて蓋を閉めた。
「これは半蔵門の分ね」
「うん、これは…東西の分、こっちは…どーしようかな」
珍しい。あればあるだけ綺麗に食べてしまう南北が、人にあげる分を考えているではないか。
「三田と目黒にあげよう、かな」
「…南北は優しいね」
「え、なんで?」
「だって他社の人にまで分けてあげるんでしょ?」
東西はわかるとして、他所様にまであげようとするのだ。素直じゃない所もあるけれど、この子は優しい。
「何だかんだで助けてもらってることもあるし、普通じゃない?」
「そう?」
「そうだよ」
ひとつ手に取っては口に運び、美味しそうに食べるその姿があまりにも微笑ましくて、思わずこちらも頬が緩んでしまう。
いつもその身体の何処にこんな量の食べ物が収まるのか、不思議で仕方なかった。答えはまだ見付からない。
「…銀座、嬉しそうだね」
「美味しそうに食べてくれるのは、嬉しいことだよ」
愛しい愛しい、僕らの末っ子。
必要とされているから君はここに居るんだよ。どうかそのことを、いつまでも胸にしまっておいてはくれないだろうか。
(嘆く必要は無い、精一杯の結果なら胸を張れば良い)
(僕らにはその資格があるから)