千歳+東西
※ネタがネタだけにご注意下さい
※相変わらず捏造ばかり
突如交通局の高速電車宛てに入れられた連絡。千歳線、事故により運転見合わせ。函館本線もそれに伴い運転見合わせ。
それを聞いた僕は何を考えるでもなく、とにかく千歳に会いに走っていた。
「千歳っ、大丈夫?痛くない?」
「…汚いから、あんまり近付かないで」
「で、でも…」
彼の姿を見付けてすぐさま駆け寄る。でも、近付けば近付くほど距離を取られ避けられてしまう。
綺麗な髪が、トレードマークの上着が、赤黒く汚れているのがはっきりわかる。
「東西ちゃんまで、汚れちゃうから」
僕のことなんてどうでもいいのに、それよりもっと自分の心配をして欲しいのに。何もしてあげられないことが悔しくて、気が付いたら泣いていた。
驚いた千歳が手を伸ばそうとするのだけれど、自身の手を見て動きを止めた。
「泣かないで…東西ちゃん」
「だって、だって千歳が…っ!」
着ている白のカッターシャツが汚れるのもいとわず、彼の手を取った。シャツの袖で拭えばまだ乾いていないものは簡単に落ちる。
彼は何か言おうと口を開いたみたいだけれど、結局何も言わなかった。
「僕はいいから…それより、自分の心配してよ…」
「…ごめんね」
「体、大丈夫なの…?」
「足と頭がちょっと痛い、あとは…東西ちゃんの顔見たからへーき」
へらりと笑う顔に垣間見える疲れの色。どうやら遅延、運休などの大まかな事後処理は函館に任せたらしい。さっきから北兄と豊君から連絡メールが来ている。
「振替は、僕らSTで行ってる…札幌まで乗客は運ぶから」
「…ありがと、東西ちゃん」
やっと触れてくれた手を、思わず握りしめてしまった。いつの間にこんな涙脆くなってしまったのか、再び視界は滲むばかりだった。
めそめそと子供のように泣くばかりの僕を、あやすように撫でてくれる千歳。だからそんな千歳に、僕は甘えてばかり。
「もー泣かないのー、俺のことで泣くなんて東西ちゃんくらいじゃない?」
「だって、千歳は…僕の特別、だもの…」
きょとんと目を丸くする彼に服が汚れることも忘れて抱き付いた。
千歳は、特別。それはきっと、初めて会ったあの日から決まっていたこと。
「…東西ちゃん、そういうの反則って言うんだよ?」
「何、が?」
「ううん、なんでもなーい」
「変な千歳」
千歳は、僕の特別。
じゃあ、僕は千歳の何?
(いつでもいいから、いつか答えを教えて)