千歳+東西





※市営地下鉄は三兄弟






「東西ちゃーん!」
「千歳?どうしたの」
「いきなりだけど大通まで乗せて?」
「それは構わないけど…」

僕の手を掴み走り出す千歳。現状はもちろんよくわかっていない。
とりあえずやってきた宮の沢行きに乗り、大通駅へ向かう。

「それで、大通でどうするの?」
「函館にプレゼント買うんだよー」
「あれ、誕生日近かったっけ?」

静かに揺れる車内で、ゆっくりと記憶を呼び覚ます。でも千歳が函館にプレゼントをあげる理由は考えつかなかった。
それに、プレゼントなら別に大通じゃなくても買えたんじゃないだろうか。

「いつもありがとー、って」
「なんで大通なの?」
「だって札幌だったら函館にバレちゃうじゃん!白石からは函館の線なんだから!」
「そっか」

新千歳空港でも良かったんじゃないかなぁ、なんてことはこの際飲み込んでおいた。僕も北兄と豊君に何かあげよう、かな。

「東西ちゃんにも今度あげるからね!」
「じゃあ僕も千歳にプレゼント用意するね」
「ホント!?」
「うん、本当だよ」
「東西ちゃんありがとー!なまら楽しみにしてる!」

とても嬉しそうに笑う千歳を見て、何だか僕も嬉しくなった。

千歳は、地下鉄以外で唯一僕と繋がる路線。札幌を走れない僕にくれた、ただひとつの地上への光。

「千歳、ありがとう」
「ん?よくわかんないけどどういたしまして!」

車内アナウンスが大通駅への到着を告げる。僕らははぐれないように、手を繋いで歩いた。



新札幌駅と新さっぽろ駅で、僕らは出会う。




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