あさひ+とき





※たにがわが生まれる前の話






その背中だけを、私はいつも見ていたの。



「あさひっ、早い…!」
「あぁ、ごめんごめん」

速達タイプのあさひはやっぱり足が早い。足の遅い私はいつも後ろをついていくばかり。
彼女はそんな私に気付くと少し速度を落とし、ゆっくりと歩いてくれる。

「大宮であの二人に出す書類、間違いが無いか確認してて」
「私も見直したけど大丈夫だったよ?」
「…いつ見たの」
「高崎出る前、だけど」

個人的なものではなく、上越新幹線としての書類だから自分も確認したのだけれどいけなかったのだろうか。
あさひのきょとんとした顔の理由が見付からなくて首を傾げた。

「越後湯沢で出す資料は?」
「まとめて今朝出したけど…?」



「…あたし、ときのそういう所すごいと思う」
「え…えぇっ!?」

越後湯沢で出す方はあさひが半分以上終わらせてくれてて、すんなり完成したから早めに出してしまっただけ。手が空いたから今から出しに行く書類を確認しただけで、何も大したことはしていない。
あさひの方が私はすごいと思う。それは間違いの無い完璧でいてかつ柔軟な資料を作る彼女の頭は、どんな作りなのか見たくなるほど。

「あさひの方がすごいよ!私なんてまだまだだもの」
「そんなことないよ、とき」

あさひは私の憧れで、目標で、大事な大事な親友。
あさひに追い付きたくて、あさひの隣を走っていたくて、私は足が遅くても前を向けた。前には彼女が居るから。

「ほ、ほら熊谷出たんだし大宮着くから」
「今日は何も無いといいね」
「そうだね」

東北新幹線の二人はいつも何かしらやらかしてくれるから、今日こそは平和に終わればいいのだけど。
そう思いながら、私は彼女の隣に立った。




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