上越+長野





※ちょっと前の時期に作った話






「上越せんぱい、元気がないです…」
「そう?いつも通りだけど」
「何かあったのですか?」

いつも通りだといえばそうなのかもしれないけれど、時折見せる表情にちらつく影。それが引っ掛かって心配になる。
それが通じたのか小さく溜め息をついて苦笑する。そんな顔、しないで欲しいのに。

「…たにがわをガーラ湯沢へもっと走らせてあげたかったな、って」

「もう春が、そして夏が来る。ガーラ湯沢までは冬季しか使わない支線だから、一ヶ月ちょっと繰り上げだ」

上越せんぱいの管轄であり、在来上越線の支線でもある越後湯沢ーガーラ湯沢間の路線は、ガーラ湯沢スキー場が営業している冬季しか使われない。
ただでさえ半年も使わない線なのに、スキー場が繰り上げ閉場してしまってはもちろん新幹線の利用は無くなってしまう。

だから区間運休を出した。走りたくとも駅が開かず、利用価値も無くて走れないから。

「でもそれは、上越せんぱいの責任じゃないです」
「わかってはいるつもりなんだけど、ね」

雪と共存する豪雪地域、そこを走る新幹線がスキー場と手を繋ぐ。しかし、今年その手は早くに引き離されてしまった。

どんなに考えてもかける言葉が見つからなくて、ぼくはただ隣に寄り添っていた。
(東北せんぱいなら、この人に何か言えたかもしれない)




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