赤い背に大きな違い鎌。
手が届くのが嘘みたいで。本当は言葉を交わすことすら叶わないはずなのに。

「あき、」
「なぁに?」

どうして僕は許されているのだろうか。どうして彼は僕を呼ぶのだろうか。
いつもと同じように茶を出してくれる彼は、優しい。

「時々不安になる。僕は本当に秋の近くに居てもいいのかな、って」

遠い遠い存在であるはずの彼。権中納言様、それがわからないほど僕も子供じゃない。

だから逆に怖くなるんだ。

「僕は居て欲しい。でももし左衛が離れてしまうなら、」


「僕が追い掛けるから」

正面向いてそんなことを真剣に言われては目も逸らせなくなってしまう。
普段はふわふわとしているのに、ふと何気ない時に見せるその一面。それに引き付けられる。

「陸奥まで、来てくれる?」
「筑前から、逢いに行くよ」

ふわりと花が舞いそうだ、彼の周りは。いつもそう思う。
だからなんて似合わないんだろう、大名なんて。

「…さえ、」
「?」

「大好き」
「僕も、大好き」

まだ二十にも満たない、大人になりきれない僕らがこんなことをして、世間は戯れ言だと笑うかもしれない。
それでも、一緒に居られればただそれだけでよかった。



――――――

陸奥と筑前、かなり遠いですよね。だから京か大坂で会ってたらいいなぁ、とか。
お手紙のやり取りしててもいいと思うんだ…!

題名:Largo様







きみ、だから



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