早く帰りたい。こんな息苦しい空間から一刻も早く立ち去りたい。
それを許さないのは位か、名前か。


「金吾殿?」
「どうかしましたか?」

ふらりと視界が歪んだ瞬間、周りから声がした。なんでもないです、と取り繕うのだが、また世界が歪む。
そしてこの前の雨が原因で軽く風邪を引いてしまったことをはたと思い出す。

「本当に、大丈夫ですから…」
「顔色がよくないですし無理しない方が、」
「今日はもう帰った方がいい」

いくら平気だと言っていても、周りからそんなことを口々に言われてしまっては退室せざるをえない。
仕方なしにすごすごと元居た部屋に帰れば、心配そうにそわそわとしている家臣四名。

「た、ただいま…」
「秀秋様!?」
「身体は大丈夫ですか!?」
「無理しちゃあかんぜよ!?」
「熱は!?寒気は!?」

この四人は本当に、自分のこととなると心配性過ぎると常々思う。心地良いそこに自分は甘えて、へにゃりと笑うのだ。
此処は小早川だけど秀秋で居られる場所。当主としても求められるけどそれ以外も求められる。
それが堪らなく居心地がいい。

「大丈夫、帰ろう…?」
「頼勝、手配を」
「え、あ、正成殿?」
「平岡早く」
「秀秋様もうちょい我慢してな?」

自分のこんな些細なことで嫌な顔ひとつせず慌ただしく動き回る家臣が居て、小さなことにだって心配してくれる人が居て。
自分は恵まれている。こんな素敵な人達に逢えたのだから。

「…皆、ありがとう」



――――――

小早川家はほのぼのしてる感じ
家臣みんなは秀秋が好きで仲良し








飾りだけの位なんて、望んでいない



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