※某ゲームの秀秋+αをうちの秀秋で
ちなみに秋=秀秋、左衛=重綱





「何してるの、左衛」
「秋…」
「何かあったら困るから護衛くらい付けてって言ったよね?」
「ごめん、でも自分の身なら自分で守れるから平気だよ」

こっちは裏秀秋。
甘いものが好きとかそういったことは変わらないけれど、言葉や行動がいつもより鋭くて突き刺さりそうになる。
人は信じない、信じたら裏切られるから。もし信じたなら、決して手放さない。

「ここから逃げる気?言っておくけどそんなことさせないよ?」

掴まれた腕がミシリと軋む。痛い。でもどこぞの姫君でもない自分のこの腕は、そんなことじゃ簡単に折れはしない。
射抜くような視線を受けながら、普段通りに笑ってみせる。

「しないよ、僕はここにいる」
「嘘」
「本当」

何なら足でも折ってしまえばいい、そうしたら歩くことが出来なくなるから逃げられない。不安なら閉じ込めてしまえばいい、そうしたら君以外には会えないから。

「左衛、」
「何?」
「…ここに居てよ、ずっと」

そして戻ってくる表秀秋。
先程とは違い雰囲気が柔らかくてふわふわしてて、まるで花のようだ。
くしゃくしゃになるぐらい強く握られた裾。俯いた顔から表情は伺えないが、手は小さく震えている。

「伊達殿にはきちんと僕から言っておくからさ」
「うん」
「あと一日でもいい」
「うん」
「もう少しだけ、僕の傍に居てよ…」

彼は、人が思うより強くない。
人に迷惑をかけたくないから強く見せているだけで、本当は弱くて小さいただの青年でしかないのだ。つき続けた嘘が自由を奪い、彼を狂わせていく。

自分は何もしてあげられない。
この手は誰かを助けられるほど万能ではないし、だからといって何かを掬えるほど大きくもない。何の力にもなってあげられないもどかしさばかりが募る。

「僕は、」
「な、に…?」
「君が思うほど、いい人間じゃない」
「え」
「何も出来ないし役にも立たない…でもね、」
「うん」

「誰よりも秋が好きだよ」

でも言葉ならあげられるから。そこに溢れんばかりの気持ちを籠めて、君が欲しい言葉を差し出してあげる。

上げられた顔を見て二人で笑って、裾を握る彼の手を取って走り出す。途中ですれ違った四家老の方々に僕はひらりと手を振り、彼は満足そうに笑う。

「左衛、後で一緒に怒られようね」
「うん、いいよ」

どちらも彼に違いない。それを知っているから平然と受け入れられる。
逆にどうしてこんな彼を突き放せられようか。

「左衛、」
「うん?」

「僕も君が好きだ、誰よりも」

なんだかんだいって今僕らは幸せなんだ。誰にも理解されないかもしれない、でもねそれでもいいんだ。








知ってる?知ってた、君が好き



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