これはいけないことだと、許されないことだとわかっていたはずなのに。なのに求めてしまうのだ。

「へいは…」

名前を呼ばれるよりも前に、小さなその口を塞いでしまう。優しく優しく、少しでも負担をかけないように気を遣いながら。

「…っは、平、八…?」

その幼い背を、頭を支えていた手をそっと離せば、この現状を理解しようと目前の主が必死になっているのがよくわかる。

「このような無礼、お許し下さい」

こんなにも幼い主にしてしまった行為、後悔こそなかったものの、罪悪感は残る。
それでも抑え切れなかった。きっと自分の命はもう直ぐ終わってしまう、そんな予感がして。触れたかった、知らない所が無いくらい全て。

いつか誰かがこの綺麗な幼子に触れ、何かを教えていくのなら、初めては自分が良い。そう、思った。

「どうして、あやまる?」

ゆっくりと近付いて来たりしたら、また堪らなく触れたくて思わず手を伸ばしてしまいそうだ。
なのにこの方は、そんなことも知らず無防備に近付いて来るのだ。

「われは、平八になら何をされてもかまわぬ」
「――……本気、ですか?」

もちろん、なんて笑顔で返されたなら、自分はどう返して良いのかわからなくなってしまうではないか。

まだ死にたくない、もっとこの方の傍に居たい、ずっと一緒に生きていきたい。そうやって生に貪欲になってしまう。

(あぁでも、この方はもう私のもの)


「では、もう一度」

差し出された手を取りその身体を捕え、直ぐさま口付ける。小さく柔らかい手が静かに首に回り、より一層抱きしめる手に力が入る。

愛しく、恋しく、まだ見ぬ誰かに嫉妬してしまう自分は、何と愚かで浅はかだろうか。
しかし少なくとも今は、この方は自分しか見ていない。

(父達のように、いつまでもずっと一緒ならどれだけ幸せだろう)


恨むのは、この病弱な身体ただひとつ。








きたないかんがえ



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