※「夢の中に落ちて」の続き的な
※相変わらず小さいです
今まで築いて来たものが、音を立てて崩れ落ちてしまいそうで
「たつさま」
「何?」
「どうしてそんなに、かなしそうなの?」
隠した隙間から零れ落ちる不安や恐怖はまた己の中を巡り、消えることなく蓄積され続けていく。
僅かにそれを感じ取った左門は、躊躇うことなく口に出す。
「きっと哀しいのではなくて、怖いんだ」
「こわい、の…?」
近寄った左門をひょいと抱き寄せ、苦しくない様に気を遣いながら抱きしめる。
突然のことに多少なりとも戸惑いつつも、そのまま大人しく秀俊に身を任せる。
「…僕に弟が出来たらね、僕も兄上も要らないんだ」
「どうして?」
「僕等は父上の本当の子供じゃないから」
血は争えず、何よりも濃い。
太閤殿下の正式な血統者である弟が生まれてしまったならば、血の繋がりの無い兄達は邪魔で不要な存在と化す。
排除するには他家へと押し付けるか、いっそ殺してしまうか。
「そんなのっ…」
「左門?」
「そんなの、たつさまがくるしすぎるよ…!」
ぼろぼろと零れ続ける左門の涙は、抱きしめている秀俊の着物をみるみる間に濡らしていく。
「どうして、左門が泣くのさ」
「だって、だって…」
「左門は、僕なんかの為に泣いてくれるのだね」
あぁ、それ以上泣いては目を腫らせてしまうと、小さく頭に口付けて優しく背中を叩く秀俊。その手はしっかりと左門の身体を支えている。
「僕の為に泣いてくれる、君が居ればそれでいい」
大名でも家臣でも無い、何の接点も持たない君がこんな僕の為に泣いてくれるのならば、ただそれだけでも構わない
抱きしめた身体は小さくとも、秀俊に与えた影響は大きい。
欲しかったのは、特別扱いせずに自分を見てくれる人。
もう少し夢を見ていられる※