いっぱい食べるきみが好き






「はい、あーん」

フォークに苺を刺して目の前に開いている口にゆっくり入れる。ぱくり、と同時に閉じられた口からフォークを抜き、次は切り分けたケーキに刺す。
そんなことを何度繰り返しただろうか。早く次を寄越せ、とでも言わんばかりに開けられた口にチョコフォンデュしたマシュマロを入れた。

「こんなにいっぱいの甘味、一体君のどこに入ってるの?」

もぐもぐと動く口元と自分たちのテーブルに積み上げられたお皿を見て、思わず僕はそう言ってしまった。
白竜が行きたいと言ったから今日は二人でスイーツバイキングに来たのだけれど、甘ったるい匂いにやられ僕は早々にリタイア。甘いものは嫌いではないが量は要らない。周りが女性客ばかりなのもあって早く店を出たかったが折角のバイキング、時間ギリギリまで食事をしなければ勿体無いという精神の方が先に働いてしまった。
口の中を空にし、飲み物で喉を潤した彼が小さく息をついた。

「僕には全く理解出来ないのだけれど」
「食べた分だけ動いているから問題無いだろう」
「エネルギー消費の理屈はぼんやりわかるけど、僕が聞きたいのは今それらがどこに収まってるの?ってこと」
「単純に胃だろう」
「……そうだね」

早く帰りたいが勿体無いから踏み留まった。それも事実だが、そんなことより白いお皿いっぱいにスイーツを乗せて嬉しそうにそれらを頬張る彼を見ていたら、帰ろう、なんて言えるはずなかった。
しかし手持ち無沙汰はあまりにも辛いので、せめて何かしようと僕は白竜に餌付け紛いの行為を始めたのだ。僕がケーキやフルーツをフォークに刺して差し出す、それを白竜が食べる。その繰り返し。

「皿が空いたな、持って来る」
「行ってらっしゃい」

今度はどれにしようかとお皿片手にショーケースの前をうろうろと歩き回り、立ち止まったかと思えばまたマシュマロとフルーツをチョコフォンデュしている。その姿だけを見たら周囲の女性客と何等変わらないテンションだ。
白竜が甘いものを好んでいるのは知っていたがまさかここまでとは思わなかった。良い意味で裏切られたとも言えるだろう。
テーブルに戻って来た彼は再びお皿にスイーツをたくさん乗せていた。そのお皿を手元に引き寄せ、ケーキを一口大に切り分けているとふと白竜が口を開く。

「やっぱりシュウと来られて良かった」
「満足頂けたようで何より」

甘ったるい匂いは鼻につくけれど、幸せそうに笑う白竜が見られるからスイーツバイキングもなかなか悪くないな、と思った。



(そういえばお前はもう食べないのか?)
(僕は白竜の笑顔でお腹いっぱい)

(…そういうものか?)
(そういうものだよ)







→request:シュウ白
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