モノクロボーダーライン




※若干オレブンネタっぽい





練習が終わり、解散の号令と共に走り出す。今日こそは、今日こそは、と思い続け踏み出した一歩。スタートは決して遅くはなかった。しかし僕と彼の間にはやはり今日も黒い壁がそびえている。

「はく…」
「白竜っー!今日はどこ行くの?買い物?外食?」
「買い物、冷蔵庫空だっただろ」

ゴッドエデンからやって来た、白竜とまともに渡り合える謎の人物。名前は、シュウと言っただろうか。
彼らが一緒に住んでいるのは知っている。知っているけれど、何故。そんなことをぐるぐると考えてしまう。

「魚が食べたいなぁ。鮭か鯖か…ほっけもいいね」
「じゃあ秋刀魚だな」

話しかけたいのに、近付きたいのに、黒い壁が邪魔をする。
隠しもせずムスリと不機嫌な態度を顕わにすれば、僕に気付いたシュウが振り返る。そして見せつけるように白竜に抱き付き、こちらへと嫌みったらしく笑うのだ。

(君なんかに、白竜をあげるわけないだろう?)










テスト前で部活が休みだと、いまいち何をしたら良いのかわからなくなる。勉強するのが一番良いのだろうが生憎そんなに勉強熱心ではないのだ。机に向かって問題を解くよりは外でボールを蹴りたい。
授業も掃除も終わったが、そのまま帰るのも何だか嫌で夕日が射す教室の中、自分の机でくたりと俯いた。

「雨宮?」

トン、と机の上に紙パックの飲料水が置かれ、何事かと顔を上げれば隣に白竜が居た。びっくりした拍子に僕の腕が当たり、紙パックが落ちそうになるのを何とか押さえる。

「体調でも悪いのか?」
「平気だよ。それより、白竜が一人なんて珍しいね」
「あぁ、シュウは松風と一緒に補習を受けてる」
「じゃあ待ってるんだ」

一緒に住んでいるから、一緒に帰る。そうなんだろう?そう思うが決して声には出さず言葉を飲み込んでしまう。余計なことは、言わないのが得策。
でも、意外なことに彼がここに来たのはただの時間潰しではなかったようだ。

「いや、最近お前とあまり話してないな、と思って」
「それで教室覗いたら僕が机に突っ伏してた、ってこと?」
「そうなるな」

正直言って白竜は、僕のことなど視界の隅にも入れていないのだと思っていた。何かあればシュウか剣城を呼んで、基本的には全て一人で済ませてしまうから。後ろに居る僕のことなんて、見ていないのだと思っていた。
彼の言った「話をしていない」ということは、ほぼ「会話らしい会話をしていない」ということなのだが、それに何か問題でもあるのだろうか。チームプレーに影響をきたしている雰囲気は無いし、不都合があるとは思わない。

「でもどうして?僕と話をしなくたって君に何ら支障は無いはずだろう?」

単純に白竜が僕と話をしたくて、そのためにわざわざ来たのだと捉えることも出来た。でもそんな自惚れは要らないよ。現実を突き付けられて自分が惨めになるだけだから。
僕はへらりと笑ってみせるけど、彼の真っ直ぐすぎる眼は時に怖くなる。何もかも、見透かされている気がしてしまうから。

「久しぶりに話をするのに理由なんているのか」
「理由が欲しい、って言ったら?」
「そんなもの、自分で見付けろ」

白竜が少しムッとした様子で、持って来たもうひとつの紙パックに刺さっているストローを軽く噛む。そんなことしたらへこむよ、とでも言おうかと思ったが黙って見ていることにした。

「これは手厳しいね」
「そんなことよりお前この頃、」
「白竜」

何も言わないで何も聞きたくないから。君の一言に、一挙一動に振り回されている僕の気持ちなど微塵も理解していないだろう?僕はね、君が好きだよ。だが君を取り囲む黒い壁がそれを許さない。近付くことを話すことを拒絶する。
痛いのは嫌い、苦しいのも嫌い。でも抗ってみようと思えたんだ、もう少し頑張ってみようと。

「僕は、欲しいものは手に入れてみせる」
「まぁ自らの実力なら、誰も文句は言えないだろうな」
「言わせないよ、誰にも」

今は何も伝わっていなくたって構わない。あの黒い壁を越えて君に辿り着くまで、僕は諦めてなんかやらないから。




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