1push + 1call






ゴッドエデンの中でもトップである二チームに携帯電話が支給されることになった。何でも俺たちは他のシードに比べ練習が過酷で厳しい分、僅かな休み時間に出来る自由の幅が広いためGPSで行動把握をしたいらしい。
だがここでひとつ問題が生じた。エンシャントダークのキャプテンであり、傾向的に一番失踪しやすいシュウが「電話って何?」と言い始めたのだ。

「お前、本気で言ってるのか?」
「知らないものは知らない。そもそもこの島にはそんな機械を使った情報伝達手段は無いんだよ」
「じゃあ何を使っていたんだ」
「時間のある時は人伝え、急用は鳥、緊急時は狼煙かな」

頭が痛くなった。ここは孤島故に文化の違いや遅れがあることは予想していたが、聞いた答えは予想以上だった。
仕方なく教官に事の顛末を説明し、一番簡単で誰でも使える携帯を特別に用意してもらった。後日改めて支給されたそれを手渡し、一通り簡単に説明をすると笑顔でこいつは言うのだ。

「ねぇ、一番に君の番号を登録しておいてよ」
「はぁ?」
「白竜にすぐ電話が出来るように」

短縮ボタンが三個付いているその携帯電話。その一番に、俺の番号を登録しろと言うのだ。
確かにキャプテン同士であるし化身合体の件もある、何かという時に連絡は取れる間柄でいた方が後々も良いだろう。
仕方ない、と俺がボタンを押して登録している間、シュウはどこか嬉しそうだった。










リダイヤルからシュウの名前を探しボタンを押す、そして流れる呼び出し音。

『――もしもし?白竜?』

ほら、今日もワンコールで繋がった。
シュウが携帯電話を持って何日ぐらい経った頃だろうか。いつの間にか俺が電話をかけるとワンコールで出るようになったのだ。
そのまま現在地を問うと比較的電波の入る森の中だと言われる。シュウをこちらに呼びつけても良かったのだが、気が向いたので俺の方から向かうことにした。

「お前いつも電話に出るの早いな、暇なのか?」
「違うよ。白竜から電話がかかってくるのが嬉しいだけ」

「だからすぐボタン押しちゃうんだ」

この時はその言葉をただ聞き流していた。
だがある日、カイが少し慌てた様子で俺の所に走って来て、開口一番に言ったのだ。

「白竜、シュウ知らない?」
「知るか、大体携帯があるのだから電話すればいい」
「それがさー、あいつ気付かないのかいつもなかなか繋がんないんだよね」
「そんなわけ無いだろう」

必ず、俺からの電話はワンコールで出るシュウだ。同じようにワンコールとはいかなくとも出ないということはないはずだ。
カイがもう一度かけ直してもやっぱり繋がらず、少し待っても折り返し電話すら無い。仕方ないので改めて俺がかけると、やっぱりワンコールで出た。

『もしもし白竜?どうしたの?』
「お前…カイが探してるぞ」
『え、本当?』
「電話だって何度も鳴らしたらしい」
『ごめん気付かなかった、今からそっち行くね』

一旦そこで電話が切れ、暫くすると施設にシュウが帰って来た。だが、帰って来るなり俺に画面の「着信あり」表示をどうやって消せばいいのか聞いてくるのだ。

「ねぇ白竜教えてよー」
「このボタンを押して、次にこっちを押せば消える」
「うわーすごい、カイから電話いっぱい来てる」

どこか他人事のように話すシュウに、先程生じた疑問をぶつけてみる。

「…何故俺の電話だけ気付く」
「どうしてだろう?やっぱり僕には白竜が特別だからかな」
「答えになってない」
「何となくわかるんだよ、「あ、白竜から電話が来る」って」

いつもの笑顔で、やっぱり嬉しそうにどこかはしゃいでいる。俺は考えるのも面倒になって、それ以上答えを求めるのは止めにした。




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