宵闇二人で入水自殺
※吹雪がちょっと病んでます
(何でこんなことになったんだっけ…)
冬の冷たい川の水が容赦無く体温を奪っていく。水は冷たさを超えて痛みに変わり肌へと突き刺さる。
「寒い、よね…大丈夫?」
腕の中の小さな肩が震えた。濡れた手で抱きしめた彼はゆっくりと頷く。
どうして川の中に居るのだったか。雪道を二人で歩いていて、ふとそんな気分になったから彼の手を取って引き寄せるように飛び込んだ。浅い川ではあったけれど二人共全身びちゃびちゃに濡れてしまって、雪村の怒声が聞こえる。でもしばらくすると僕があまりにも静かだったから彼も黙り込んでしまった。
「風邪引いたら、ごめんね」
「…謝るくらいならこんなことしないで下さい」
「うん…そうだね」
藍色の濡れた髪にキスをした。でもそんなものでは全然気が済まなくて、色の変わりそうな唇に噛み付いた。逃げられないように後頭部を押さえて僕が満足するまで何度も何度も繰り返す。
凍傷で指を切り落とし、酸欠で彼を殺す。そして冷たくなった身体を抱いて僕は入水自殺。なんて、
「雪村、一緒に川の向こうへ行こうか」
「…は…?」
舟に乗るための六文銭をそれぞれ持って彼岸へと続く川を二人で渡ろう。そして三人になれたら幸せじゃないか。
何の前置きも無くそう言ってぼんやりと空を見上げていたら、勘の良い雪村が僕の腕を掴む。
「駄目ですよ」
「どうしてかな」
「吹雪先輩には…まだやることがあるから」
泣きそうな顔をして僕を引き留めるのだ。そんな顔をされてはもう何も言えなくなってしまって、ただただ彼の肩口に凭れかかった。
川の水音だけが相変わらず聞こえていた。
(まだそっちには行けないみたいだ)