何度でも、何度でも、僕らは繰り返す






融ける解ける。闇を纏って支配して、支配したつもりで底無し沼に堕ちて行く。
真っ暗な世界に差した光。光を辿って行くといつの間にか目の前に花畑が広がった。心地良い風が頬を撫で、舞い上がる花吹雪に目を凝らせばその先には白い龍。

「白竜、見付けて」
「何をだ」
「生まれ変わって来世でも、僕を見付けて」

触れたくて手を伸ばした。いや、気が付いたら無意識に伸ばしていた。
しかし手が届く寸前で龍は無数の花弁となって姿を消した。残ったのはひとつのサッカーボール。

「死んでもいないのにもう来世の話とは、お前はずいぶん気が早いな」
「そうかな」

そのサッカーボールだって、手に取ろうとした瞬間闇に溶けた。そしてまた深い深い底無し沼に堕ちて行く。音も光も届かない深閑の世界にただ独り。
世界を変えるには世界を壊さなくてはならない。

「僕も君を探すから、君も僕を探して」
「…忘れなかったらな」

望めばほら、この手には黒い斧があるではないか。これで世界を壊して生まれ変わろう。君に本当のことを話せる新しい自分になろう。
龍が残したサッカーボールは消えてしまったけれどこれだけは消えなかった。彼の、誇るべきキャプテンマーク。それを握りしめて君への道標にしようじゃないか。

「忘れないよ、白竜だもん」

さぁ、後はこの斧を降り下ろすだけだ。世界は生まれ変わる、さよならの言葉は要らない。

「はっ、大した自信だな」
「君ほどじゃないよ」

「でもね、偶然は必然なんだ」

ゴッドエデンで君に会った偶然は、ただの偶然なんかじゃなくて必然だったんだ。会うべくして出会った。あの時の君の顔を、僕は今も鮮明に覚えているよ。

「次の時代でも僕を好きになってくれる?」
「知るかそんなもの」

「大体、来世の俺が俺とは限らないだろう」

サッカーをしていないかもしれない、女の子かもしれない、僕のことなど覚えていない可能性だって十二分にある。違う人間を好きになって、そこに幸せを得ているかもしれない。

それでも、それでも―――

「それでも僕は来世に縋りたい」

「姿形が変わって名前が変わっても、魂が君のままならそれは白竜なんだ」

トン、と軽く彼を押し倒して心臓の辺りに手を当てれば脈打つ鼓動を確かに感じる。淡く色付く長い髪に口付けを落とした。

「好きだよ白竜。今も、これからも」

僕が死んでいることも知らないまま、未来がある君はどうかどうか幸せに生きて。現世で僕は君を幸せにしてあげられないから、せめて来世にチャンスをください。
君に好かれないかもしれない、そんな不安もあるけれど君を振り向かせるだけの自信をつけて会いに行くから。

「俺も、嫌いじゃない」
「相変わらず素直じゃないんだから」

だからどうか、僕を見付けて。

世界が壊れるまであと少し。




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