始まりを告げる鐘が鳴る








これは何かの運命だ

命を弄んだ奴らに復讐を
力ある者を虐げる、か弱き人間たちに復讐を










見たことのある顔が目の前を通る。ゆっくりと記憶と照らし合わせればほら、白衣を着た一人の人物と合致する。
同じ刺青を持つ白い手を取り走り出した。ざっと距離は数百メートル、到着時間は2秒ほど。

「久しぶりですね、研究者さん」

進路を塞ぐように目の前に立ち、にこりと笑ってみせれば遅れて現状を理解した元研究者は僕に拳銃を突き付けた。
手が震えている、そんなに怯えなくても望むなら一瞬で済ませてあげるのに。

「お前っ、実験体1号…!」

こちらの話など一切聞くつもりも無く、震える手が引き金を引く。弾丸はみるみるうちに距離を詰め、僕を撃ち抜こうと、した。

「……白竜、ここは一発くらい撃たせてあげないと可哀想だよ?」

カランと軽い音を立て、撃たれた数発の銃弾が地面に転がる。それをゆっくりとひとつ拾って宙へ高く放り投げた。

「可哀想?誰がだ」
「実験体2号までっ…!?」

舞い上がった銃弾はいつの間にやら向きを変えて、空気を切り裂きながら振り返った元研究者を後ろから貫いた。貫いた途端、雲も無いのに雷が落ちた。
落雷で感電しただけで焼いたわけではないから身元はすぐに突き止められるだろう。本当はもっと顔もわからないくらいぐちゃぐちゃにして大通りにでも晒してやりたい所だけれど、生憎時間切れだ。

「ふふっ、君は容赦無いね」
「見付けた時点で酸素薄くしたお前ほどじゃない」
「でもこれでまた一人、消してやった」

パトカーが近付く音がする。この犯行を嗅ぎ付けてもうすぐ摂理課がやって来るだろう。僕らを捕まえるなんて不可能に近いことを繰り返す、ずいぶんとご苦労なことだ。
白い彼の手が僕の手を取り再び走り出した。

「シュウ、行くぞ」
「うん、行こう」

命を弄んだ奴らに復讐を。
繰り返される惨劇はまだまだ終わらない。何故ならそれは何人何十人の命じゃ僕らが受けた苦痛の何分の一にも満たないから。

さぁ、その白衣を真っ赤に染め上げようじゃないか。
さぁ、今すぐにでも…!




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