蜘蛛の糸の意図





※設定とか時間軸が捏造





彼は、自分のことはあまり話さないのに口を開けば二言目には「白竜がね、」「白竜は、」と言って楽しそうに白竜の話をする。
ご飯を作るのが上手いとか、髪が長いから乾かしてあげるのに時間がかかるとか。そんな些細なことをとても嬉しそうに話すのだ。

彼の話を聞く限りでは、白竜という人物はそれほど悪い人間では無いらしい。
プライドが高くて、意地っ張りで、人を見下したような言動ばかりだけれどそれは単なる一面にしか過ぎなくて。究極という強さを手に入れるためにどれだけ努力しているか、たくさんの怪我をして血反吐を吐くぐらい練習していたのに、それを傲る素振りは全く無いのだと言う。

「全部全部、僕は知ってるよ。白竜のこと見てたもん」

努力していたことを隠しているのか、誰にも知られないようにしていたからシュウも何も言わなかった。だからその代わり自分から練習に誘って、怪我をしたら無理はさせないようにしていたらしい。

森の先を見つめる彼のその目は、愛しさに溢れていた。

「シュウはさ、」
「何?」
「白竜のこと、すごく好きなんだね」

そんな話を聞いていたら、この結論しか出なかった。これしか、無いだろう。
俺が笑顔でそう言えば、彼は目を丸くして驚いた後次の瞬間には声をあげて笑っていた。

「そうだよ、僕は白竜が好き」

嬉しそうにそう口にしながら、どこか寂しそうに笑った。










「ねぇ天馬、」

突如震える声で彼は言った。何かを恐れているような、そんな声。
何?と首を傾げたら、丁度滝の水に陽の光が反射してきらきらと輝いていた。

「君がもし僕を助けてくれるのなら、白竜も一緒に助けてあげてね」

「白竜も一緒じゃなきゃ、駄目なんだ」

溢れ出た黒い闇。
サッカーが強くて運動神経が良くて完璧なシュウの、弱い一面を見た気がした。



(白竜は、僕の道標だから)




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