どうかこちらを向いて好きだと言って






ねぇ、君の瞳には何が映っているの。

「剣城は俺の――」

今は何故かそれ以上彼の好敵手の名前を聞きたくなくて、話を遮ろうと後ろから思い切り突き飛ばした。いつもならふらついて転んだりしないのに、僕がそんなことをするなんて予想は出来なかったみたいで彼はそのまま倒れた。
すかさず倒れた彼の上に馬乗りになり、逃げられないように押さえ付ける。

「もう彼の話はいいから」

状況が理解出来ていないからどうしていいのかわからない、とでも言いたげな彼の手を取った。白い、綺麗な手。
勝手に嫉妬してることぐらいわかってる。でもどうしようも出来なかった。

「白竜、もっと僕のことを見てよ」

言わずにはいられなかった。言葉にしなければきっと、彼は僕がこんなことを思っているなんて気付かない。それぐらい好敵手のことと究極の存在になることしか頭に無い。
僕は、彼の何だろう。彼は、僕の何だろう。

「――…シュウ、」
「何?」

「俺はお前のことを見ているが?」

真っ直ぐな視線に貫かれる。彼が言っているのは普段のことなのか、今のことなのかはわからないけれど。逸らすことなくこちらを見つめる彼は無意識にそう返したんだと思う。
確かに彼の隣にはいつも僕が居て、僕の隣には彼が居て、お互いの存在がとても大きい。だから彼にとって今の答えは、当たり前だったのだろう。

「君は本当、質が悪い…」

無自覚で無防備な彼が、すごく愛おしい。そんなことを言われた僕がどれほど内心喜んでいるかなんて、きっと彼は気付かないままだ。
繋いだ手に唇を寄せて、手首の内側に跡を付けた。僕が何をするのか、少し遅れて気付き慌てて腕を振り払ったけれど時既に遅し。彼の白い肌にくっきりと残された僕のものだという証。

「お前これっ…!」
「白竜がいけないんだよ?」

「君があまりにも可愛いこと言ってくれるから」

可愛い子ぶって首を傾げながら、にこりと笑ってみせる。睨む鋭い視線なんてさらりと流して再び彼の手を取り指を絡めた。

「…もういい」
「そんなこと言うと僕の好きなようにしていいって取るよ?」
「そうとは言ってないだろ!」

怒ってムキになる君も、ボロボロになりながらも究極を目指して努力する君も、時折嬉しそうに笑う君も、全部全部好きだから。
だからどうか、君も僕を好きになってよ。今以上に、これ以上に。

「白竜…好きだよ、好き」
「ん、そうか」

小さく小さく、嬉しそうに君が笑ったのを見て僕は、酷く泣きそうになった。
(そんな風笑うなんて、反則じゃないか)




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -