闇緑+闇白(BS五期)
それは痛いのだろうか、苦しいのだろうか。知るつもりは毛頭無いけれど、何故かふとそう思ったのだ。
「ヤイバちゃーん、ごめんね」
「何に対しての謝罪だ?先の件ならもう終わった話だ」
「うーん……あ、そうだ」
ひょこりと姿を現したかと思えば首を傾げながら笑って謝る。口調はいつものように軽いが、何故か僅かな違和感を感じた。
そんなことは余所にしていきなりパチンと指を鳴らし何かを探し始めるその様子を眺めていたら、目の前に差し出される一振りの剣。
「なんだ」
「"黒蟲の妖刀ウスバカゲロウ"、闇の緑のソードブレイヴ」
「それは見ればわかる」
この間ツルギとのバトルに負け、その代償に失いそうになった剣。こちらは"それを何故、余に差し出すのだ"と聞いているのだ。
だがゆるりと彼の顔が緩んだ途端、有無を言わさぬ勢いで手に握らされる。正直少し驚いた、彼にそこまでの行動力があるとは思わなかったから。
「ヤイバちゃんに、あげる」
「何故に」
「あの時光の赤ちゃんに負けて僕はこれを差し出そうとした。それが約束だったから」
「知っている」
「そして「一緒に行かないか」と言われて一瞬でも気持ちが揺らいでしまった」
だから余が強制的に連れ帰り、力と権限を持ってして闇の緑の力を消そうとした。ソードアイズが消えれば次の新たなるソードアイズが生まれるから。
力が消されるその瞬間とは、果たしてどのようなものなのだろうか。彼は苦しそうに声を上げていたが、痛いのだろうか。
「でもヤイバちゃんの声を聞いて姿を見たらね、なんて馬鹿なことを考えたんだろーって」
「だって僕に楽しいものを見せてくれるのはヤイバちゃんだけだもの」
からからと笑って丁寧に跪く。形だけの忠誠を誓う、それもいいだろう。渡されたウスバカゲロウをそっと懐にしまい、玉座に肘をつく。
「次は無いぞ」
そう言うと彼はゆっくりと頭を下げた。