バン*ジン(dsw)
紅く美しい瞳にネオンの光が反射してきらきらと輝く。それがあまりにも綺麗だったから一瞬声をかけるのを躊躇った。
「…ジン、何してんの?」
平静を装い隣に立つ。街の夜景がダックシャトルの窓に映る。きらきらと光るそれは、眠らない街を体現していた。
「特に何かしていたわけではないが、ただなんとなく…」
彼の言葉が、続かない。あぁ、やっぱり駄目だ。言わなきゃ。
「平気?無理してない?」
手を取りぎゅうと握りしめる。大きなガラスを伝わる夜の冷気に冷やされたその手は、いつもよりいささか冷たかった。
NICSの長官としてジェシカの父が、パラダイスに従事する研究者としてヒロの母が、そしてLBXの開発者でありディテクターのトップを演じていた俺の父さんが居る。ここ数週間で俺たちの周りには一気に両親というものが溢れすぎている気がした。
「…大丈夫だよ」
「嘘」
「そんなことないさ」
「そんなことある!」
俺の言わんとすることを汲んでくれたジンが笑う。でもそれを全否定して掴んだ手を引き寄せた。手がさっきよりまた少し冷たくなっている。
ヒロもジェシカも彼の家族のことを知らない。でもそれは仕方ないことだ。なんたってこちらからは何も情報提示をしていないのだから。
そうして俺は勝手に心配になってしまったのだ。彼が無理をしていないだろうか、と。両親、家族というものを目の前で突き付けられ、もしかしたら無理して自分を繕い笑っているのではないか、と。
「ねぇジン、もっと俺を頼ってよ」
思わず手が震える。こんなにも彼を想っているのに、こんなにも自分は無力だ。
コツンと額をくっつけ空いている片手を彼の頬に添えた。繋いだ手ほどではないが冷たいことに変わりはない。
「…無理はしてない、これは本当だ。ただ、両親が居たら、あんな感じなのかな…って」
「それに今は、独りじゃないから」
目の前に居る彼は俺にそう言って、綺麗に笑った。遅れて意味を理解した俺は、思わず繋いだ手を離して彼を抱きしめた。
(そうだよ、俺が居るから)