沖田→チナミ(ht5)
どうしようもなく惹かれる、彼女とは違う意味合いで。それは彼が僕と対になる朱雀の八葉だからなのか、理由はわからないけれど。
「チナミ」
好意だと思われる感情を抱く反面、時折彼を傷付けてみたいような気もする。しかしそれも何だかしっくり来ない。
「チナミは…可愛いです」
「なっ、男が可愛いと言われて嬉しいわけないだろう!」
「誉め言葉だと思ったのですが、違いましたか?」
相変わらず言葉というものは難しい。彼にはいつも怒られてばかりいる気がする。しかしそれは僕のことを思って言ってくれているのだと知ったから、今は少し嬉しい。
でもやっぱり彼には「可愛い」という表現が適切だと思う。それじゃなかったら、一体何だというのだろう。
「お前はもし自分が同じことを言われたらどう思うんだ」
「チナミに言われたのなら、嬉しいですが」
「俺じゃなかったらどうするんだ」
「別に、どうとも思いません」
僕より小さくて、コロコロと表情を変えて、それでいて強くて、誰よりも兄を慕っている。近頃よく周りの人に「お前は変わった」と言われるようになった。自分ではあまりわかっていないが、変わったとするのなら僕を変えたのはおそらく彼だろう。
「沖田、」
「何でしょう?」
「冗談を言う暇があるなら稽古に付き合え」
そう言って独特の金属音を立てながら構えられた鉄扇。その一瞬で雰囲気がガラリと変わる。だからそれに応えるようにと僕も刀を構えた。
貫くように鋭い眼は、朱く綺麗だ。
どうかこの感情に名前を付けて。