カイト*V←ゴーシュ(ygo-z)
「おー、その格好すると昔のノリを思い出すなぁ!何年振りだ?」
長い廊下を歩いていたら後ろから声が聞こえた。周りに自分以外の人は見当たらない、ということは私に向けて話しかけられているということだ。ゆっくりと振り返れば自分よりいくらか背丈がある彼だった。
「…ゴーシュ、君は私がここに居て何も思わないのかい?」
「なんでだ?だってカイトが許可して居るんだろ?だったら何か問題あっても奴の責任で俺には関係ねぇし」
白衣を着て、長い髪を結って、自分でもいつ振りか忘れてしまうほど久しぶりの格好だった。
だがさらっとそう言ってしまう辺りは相変わらずで、あまりの不意打ちについ笑ってしまった。
「ふふっ、君は相変わらずだな」
「そうかぁ?てかそれより一緒にメシ食いに行かね?」
いきなり手を取られ、こちらの都合など聞く様子もなく歩き始めてしまう。いけない、カイトに用があるというのに。
断ろうと口を開いたその瞬間だった。
「クリスッ!」
突如空いている反対の手を掴まれ強く引かれる。その反動でふらつくがすかさず支えてくれたおかげで転ばずに済んだ。
「カイト…よかった、探していたんだ」
「ゴーシュ、クリスを連れてどこに行く気だ」
「そんな怖いノリすんなって!一緒にメシ食おうとしただけだからよ」
カイトが勢いよく、私の腕を掴んでいたゴーシュの手を払い除けた。彼の手にぎゅうと力が入るとそれなりに痛いのだが、そんなことを告げる隙も無いくらい空気がピリピリしている。
「クリスには俺との先約があるから諦めるんだな」
「…しゃーねぇ、"今日は"な」
ひらひらと手を振って去って行く後ろ姿を見送り、隣を向けばムスリと機嫌の悪そうだったカイトの顔が少し緩む。始めから彼と約束なんて何もしていないのだ。つまり先程の"先約"というものはカイトがついた、小さな嘘。
「カイト、」
「何だ」
「何をしようか」
「…ハルトのお菓子を買いに行く、だから付き合って欲しい」
だから嘘を真にするために今から"約束していた"ことにして出掛けようじゃないか。
※Vに手を出すフリをして、本当はカイトをからかっているだけというゴーシュだったり