赤白(BS二期)
「ではな、百瀬勇貴」
「あぁ」
姿が見えたから勇貴に飛び付こうとしたら、誰かと話をしていたようなので思い止まった。彼の機嫌は損ねたくない。しかし相手は誰だったのだろう、見たことはあるはずなのだが思い出せない。
「…勇貴、誰?今の」
「ベルガーか?異界王の側近だ」
「何もされてない?変なことされてない?」
「君は何の心配をしているんだ、ただ花を貰っただけだよ」
ほら、と出されたのは箱に入った色鮮やかな花。プレゼントとして花を贈るのに花束ではないというのも不思議ではあるが、何故か花弁がきらきらしている。
「食用花。それを更に加工して菓子のようにしてあるらしい」
勇貴の白い指が箱の中にある赤い花を取り、ゆっくりと口に運ぶ。小さな音を立てながら花を食べる彼の姿は、あまりにも綺麗だった。
「甘い…」
「勇貴さ、そんな顔しないでよ」
「何故?」
我慢出来なくなる。キスしたい。
そう思って彼の襟を掴み引き寄せキスをした。きらきらしていたのはどうやら砂糖だったらしく唇が甘い。
「もっとしたくなるから」
「…気を付けよう」
それにしても勇貴に花を贈ったあの異界王の側近だと言っていた奴、気を付けておかないと次は何をするかわからないから。
「勇貴は、誰にも渡さないから」
誰にも聞こえないくらい小さな声でそう宣言した。