青砥+杉山(gnof)


※登場前につき終始捏造



ボールを持った途端、彼の目の色が変わる。見惚れてしまうほど華麗に、かつ鮮やかにピッチを駆け抜けシュートを決めてしまう。
その一連の流れを、背中を、いつだってゴールから見ていた。

「お疲れ様」
「…多義、また背が伸びた?」
「少しだけ、ね」

少しずつ、背が伸びる度に彼が遠くなっている気がする。それは身長差の問題だけではなくて、技術や何か別のものだと思う。
膝が軋むと何故かぎゅうと胸が痛くなる。

「俺は、多義が羨ましい」

突然彼がそんなことを言うものだからつい首を傾げてしまった。僕にとっては彼の方が羨ましい。天才的なセンスを持ってして敵サイドに切り込んで行くその、一瞬の煌めき。
ポジションが違うと言えばそうなのかもしれないけれど、僕には彼が眩しくて仕方ない。

「その身長は努力では手に入れられない天性のものだ」

周りに「これからもっと伸びる」と言われてもそれは確証の無い気休めだ。小柄な彼はいくら技で相手を上回ってもフィジカル面で劣ってしまう。
技術は努力で得ることも出来るが、身体は天性のもの。いわば、遺伝という名の血が決めるものに近い。

「もっと、琢馬とサッカーしたかったな」

僕は身体の成長にスキルが追い付かなくなって下手になった。だからチームに迷惑をかけないように脱退した。荷物にだけはなりたくなかったから。

本当は、もっとサッカーがしたかった。
彼と、ヘヴンリーのみんなと一緒に。

「君が望めば出来るさ」

柔らかく笑った彼の白い手が、僕の黒い手を取る。そして彼は振り返らずに走り出した。
いつだって煌めく琢馬は僕の、先を照らす光だった。



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -