赤白(BS二期)
「勇貴、」
全部は無理だし、お前がくれないって始めからわかっているから。だからほんの少しでも構わない、だから。
「お前の背負っているもの、俺にも持たせてくれよ」
今まで二人で持っていた、過去から続く輪廻と抗うことの出来ない現実と不確かな未来。一人で背負うには重すぎる。このままじゃ、いつか彼が押し潰されてしまう。
手を取り近付いて見た綺麗な瞳は揺れていた。
「…君にまで負担をかけさせる理由は、無い」
「でもさ、一人だと重いだろ」
肩がびくりと震えた。そう、最愛の妹は彼を守って消えてしまった。美しい白の王。その美しさは儚さを持ってより輝く、誰かが言っていた。
確かに今の彼はふらりふらりと揺れて危なっかしい。だから支えが必要なんだ。
「もっと俺を頼って」
抱きしめた身体は予想以上に薄くて泣きそうになった。来世でまた巡り会う約束をした二人だから、もう彼は現世に生きる理由など無いのかもしれない。
そんな俺の予想を読んだのか、彼がゆっくりと口を開く。
「果実が救ってくれた命だ。無駄にはしないさ」
「あぁ、そうだな」
「俺の背負っているものは君が思うより重いだろう」
「その覚悟が君にあるなら、」
言葉を遮るように口を塞ぐ。憎らしい身長差を背伸びでカバーして触れた唇は少し冷たかった。
そして突然のことに目を丸くする彼に俺は言ってやるのだ。
「やってやろうじゃん!」
少しだけでも勇貴の荷物が持てたなら、俺にも勇貴の悲しみが少しぐらいわかるかな。
(お前の辛さが少しでも減るなら、それで良いんだ)