南雲と基山




なんとなく、その手がくすぐったくて気が散ってしまう。だから髪に触れる指を避けた。

「何?晴矢」
「は?」
「俺の髪、別に珍しくもないでしょ。似たような頭の色してんだし」
「あんたとは似ても似つかねぇよ」

確かに系統の違う赤かもしれない。俺の方が鮮やかで、晴矢の方が紅色に近い。
俺はこの顔も髪も何もかも嫌いだから、正直どうだっていいんだ。でも晴矢も風介も好きだって言ってくれる。

「だから好きだ」
「君の方がずっと、いいと思うけどね」

そう言って笑ったら、パシンと頭を叩かれた。意味がわからなくて首を傾げてやればまた叩かれた。
全部、音ばかりが響いて痛くもないけれど。

「ばーか」
「何でさ」
「あんたはそのままでいいんだよ」
「は?」
「俺らのヒロトはあんたなんだ」

あーあ、風介もそうだけどなんでみんなこういうとこだけよく理解してるんだろ。円堂君にも言われたことがあるけれど、なんかそんなこと言われたら馬鹿馬鹿しくなってくるじゃないか。
まぁきっと、そんな馬鹿馬鹿しい話なんだろうけれど。

「いって!」
「お返しだよ」

だから晴矢の頭を一発だけ叩いておいた。彼ほど優しくは出来なかったけれど。


今が素晴らしいのなら、過去を乗り越えられるかな?