雨宮と白竜/パロ ※7Dパロ+捏造 渋谷を中心に活動していた組織、ZEROをこの度都庁に迎え入れることとなった。第13班が対応に当たっていたために僕はまだ当人たちの顔を見たことが無い。話に聞く限りではリーダー格の人物は僕らS級の人間と同等かそれ以上の能力を持ち、ライモン機関の手を相当焼かせたようだ。 彼らはつい先程この都庁に着いたらしく、都内に出ていた僕は急いで戻りエントランスにあるエレベーターのボタンを押した。チーン、と聞き慣れた電子音がしてドアの開いたエレベーターに乗り込み、会議室のある7階のボタンを押して待つこと数秒。再びチーン、と音がしてゆっくりと開くドアの向こうにある廊下をぱたぱたと駆け抜け、勢いよく会議室に飛び込んだ。 「ZEROの子が来てるって聞いたんだけど!」 「……遅い」 大きな音を立てながら飛び込んだその会議室には初めて見る顔がふたつ。白と黒が目を引く、対照的な二人だった。 剣城君にそう言われ、時計を見れば確かに少し遅い。都庁に戻る途中でドラゴンに遭遇したのが原因だった。小声で彼と天馬に謝り、改めて向かい合った二人を見ればやはり白と黒。しかしその白い子が銃を装備しているとわかった途端、僕はすごく嬉しくなってしまったのだ。 「あっ、彼が第10班所属の雨宮太陽」 「初めまして、雨宮太陽です」 「こっちの二人がZEROのリーダー」 「白竜だ」 「僕はシュウ」 高鳴る胸を抑えながらよろしく、そういった意図を込めて手を差し出したけれど、それは取られることなく無視される。行き場の失った手を何事も無かったようにしまって、会議室内に響く天馬の声を聞いていた。 『ZEROのみんなは都庁南の14階を居住区に用意してるからそこを使ってね』 いくつかの事務処理と報告を済ませ、僕はまたエレベーターへと乗り込む。新しく人の住むことになったフロアに向かうため「14」のボタンを押した。程無くして着いた真新しいフロアには既に人が移って来ていた。 そしてぐるりと辺りを見回し探していたそれは、実にあっさりと見付けられた。硝子へと差した光に当たってきらきらと輝く白。窓際に置かれたソファーに見えるそれに向かって、ひょこひょこと近寄り声をかける。 「ねぇねぇ、君もトリックスターなの?なら僕と同じだ!」 「だったら何だというんだ」 先程顔を合わせた時に垣間見えたホルダーに収まっている銃の存在。それは彼が僕と同じ俊敏性S級のトリックスターだということを示していた。 サムライやサイキックなどは複数居るが、生憎このライモンにトリックスターは自分一人しか居ない。だから余計に彼のことが気になってしまい、話しかけずにはいられなかった。 「僕はダガーだけどメインはどっち使うの?」 「……銃、しかし基本的にはどちらも使える」 トリックスターの能力は大きく分けてふたつ。飛行を得意とする敵に有効な技や連続射撃能力を持つ銃と、状態異常や武器を通して敵の体力吸収能力を持つダガー。どちらかに専念しその能力を伸ばす、ということは多く見られるが、どちらも使えるということは珍しい。現に僕はダガーをメインとしているからか、銃の扱いは然程得意ではないのだ。 そんな中、不意に彼が銃を取り出し僕の喉元に突き付けるものだから、僕も条件反射でほぼ同時にダガーを取り出し同じく彼の喉元に突き付けてしまった。彼の場合トリガーを引かなければこちらに外傷は無いが、残念なことにこちらは刃物。直前では止めたものの、どうやら出血は無いが彼の皮膚を薄く切ってしまったらしい。 「白竜、くん…?」 そっと名前を呼ぶが、こちらを見据える瞳は全くと言っていいほどブレない。これでは見定められているようだ、といえばまさにその通りなのかもしれない。 しばらくそのまま膠着状態が続いたが、彼が銃を下ろしてくれたのを合図に僕も突き付けたままだったダガーを下ろし、二人揃ってホルダーに納めた。 「ほとんど歳は変わらないだろう?呼び捨てでいい」 「えっ、いいの!?」 「構わないと言っている」 「じゃあ僕のことも"太陽"って呼び捨てでいいから!」 「そうか」 どうやら彼の中では少なからず認められたようだ。話しかけた当初よりいくらか表情が柔らかい、ような気がする。 だが今はそれでいい。0からのスタートなのだから、これから関係を築けばいいのだ。 「白竜、」 「これからはよろしくね」 再び差し出した手は、今度こそきちんと繋がった。 He remained unperturbed in the face of danger.(遭遇) |