シュウと白竜




白くて、冷たくて、手で触れるとすぐに溶けて水になってしまう。空から雨のように降ってくるこれは「雪」というらしい。

「シュウ、」

空気中の水分が冷やされて結晶となりどうのこうの…と僕の疑問に見合う一応の説明はされたが、いまいちその理解には苦しんだ。とにかくその時は「とりあえず、雨が寒いと雪になるんだね」と返したことはまだ記憶に新しい。
深々と降り続く雪は音をも吸収するのか、人通りの少ない脇道を歩いていたなら彼の雪を踏みしめる足音以外何も聞こえない。人が居ないわけでも、周りに何も無いわけでもないのにやたら静かなのだ。そんなことを考えていたら数歩前を歩く白竜がふと僕の方へと振り返り、小さく息をついた。

「どうしたの?白竜」
「……裾を掴むな、歩きづらい」

そう言われて彼から自分の手へと視線を移せば、何故か彼の上着を掴んでいるではないか。白く降り積もる雪に白い彼が溶けてしまいそうだ、きっとそんなことをほんの僅かでも思ってしまったから無意識にこの手が白竜を掴んだのかもしれない。

「あぁ、ごめんね」
「掴むならこっちにしてくれないか」

パッと手を離したはいいが、空いたこの手はどうしようか。手袋などというような防寒具は生憎持ち合わせていない。指先から身体へじわじわと冷たさが回るのも時間の問題だと思ったその時、差し出されたのは彼の白い手。僕はすかさずその手を取り、そのまま自分のポケットにしまった。

「こうしたら、もっと暖かいでしょう?」

繋いだ白竜の手も僕と同じく冷たかったから、これ以上冷えないようにと外気から隠してしまう。そして雪が白い彼を隠そうとしてもすぐに見付けられるようにと、僕はポケットの中にある手をぎゅうと握るのだ。