バーンとガゼル




私は君に勝てない
君は私に勝てない



(あぁ、此処に)

最近彼はよく外に出掛ける。ある日何気なく通った道、高架下に見える見慣れた姿。
そして隣には雷門とは違う他校のユニフォームを着た、私と似た雰囲気のマフラーの子。

「…間違っている」


「あそこは、」

無意識に口を突いて出る言葉。気付き慌てて口を押さえるがもう遅い。

違う。
彼が間違っているんじゃない、私があそこに居るべきなんだ。




帰ってからも今日見た光景がちらつく。そんな自分に嫌気がさし、いつも通りを装いながらもほんの僅か、誰に対しても素っ気ない態度を取ってしまう。
しかしそんな時に限って顔を合わせてしまう。

「どうしたガゼル?」

妙に鋭い。なのに、

「菓子でも取られたか?」

どこかズレてる。

「…違う」



君が居ない
君の隣に居るのは、私のはずだ

彼がマフラーの子を近くに置く理由を、私は知らない







※下のと対になっているこれまた古いネタでした