剣城と白竜




忘れた、とは言わない。
忘れよう、とも思わない。

あの時間を否定することは、今の自分を否定することだ。

「大丈夫だ、上手くやっている」

化身を出して使いこなすのではなく身に纏うだとか、他人のオーラを自らの中に取り込んで強くなるだとか、訳のわからないことが立て続けだった。
それでも今は何とかやっているつもりだ。

「白竜、」
(白竜)

「あんまりそっちに行くな」
(まだ、こっちには来ちゃいけないよ)

「わかっている」

差し出された手はあの時とは違う。でもそれを取る自分の手は変わらない。いや、変わってはいけないのだ。
例え世界の全てがお前を忘れ存在を否定しようとも、俺の中に永遠と在り続けるから。



ありがとう、ありがとう。
お前が居たから今の俺がここに居るんだ。

伝え切れないほどの感謝を。