シュウと白竜




白と黒の大熊猫。所謂パンダのパペットを右手にはめ、パクパクと口を動かしていた。パンダの口の他に親指と小指を使えば手を動かせることも教えてもらった。
これなら、いける。

「白竜!」

見付けた白い背中に声をかけ、振り向き様にパンダを彼の口に押し付けた。

「…シュウ、何のつもりだ」
「奪っちゃったー」

離したパンダを再びパクパクと動かしカイに教えてもらった通りに笑顔でそう言ってみる。彼は一体何て言ってくるだろう、それを考えるとすごく楽しい。
だが少し待ってもこれといった反応が返って来ない。もしかして怒らせてしまっただろうか、と思って顔を覗き込むがどうやら何か考えているらしかった。

「白竜」
「ん?」
「意味、わかってる?」

僕も聞いた話だから正確なことは理解出来ていないが、それにしても彼の反応は薄い。もしかしてあまりに究極馬鹿過ぎて僕にされたことの意味がわかってなかったのかな。

「あっ、あのね白竜、」

説明しようと口を開くが続きは言葉に出来なかった。近付く顔に重なる唇。

「…つまり、こういうことだろう?」

目の前で得意気に笑った彼に全部持ってかれてしまった。何、今の可愛い、すごく可愛い。一瞬僕の妄想かと疑ったが、やっぱり目の前には笑った白竜が居た。
しかしそれよりも自分は予想以上に動揺しているらしく未だ動けないでいる。だってあんなに可愛いのは反則じゃないか。

でも悪戯を仕掛けてこんなお返しが来るなんて、案外良かったのかもしれない。カイには後でお礼を言ってあげなければ。