シュウと白竜




「白竜、手が冷えてる」

自分だって大して温度の変わらない手をしているくせに、そんなことは棚の上にあげてこいつは人のことばかり気にしている。それに、手があまり温かくないのは生まれつきで今さらどうこう言った話でもない。

「普段からこんなものだ」
「冷えてるなら尚更。これ以上冷やさないようにしなきゃ」

ぴたりと当てられた頬も俺の手よりは些か温かいものの、それでもやっぱり冷たかった。いつも通りふにゃりと笑って彼は小さく口を開く。

「…でもね、手が冷たい人は心が温かいんだって」

手足などの末端の温度が低いということは、身体の中心である心に熱が集まっているからである。といったニュアンスの文を読んだことがある。
しかしこれは心を心臓として考えていたりといろいろ思う所はあるが、そんな信憑性などはこの際無視してその説を踏襲することにした。

「じゃあ、お前の心も温かいんだな」

同じように、ぴたりと当てた手は冷たかった。冷たい手は温かい心の裏返し。
何が意外だったのかきょとんとした顔をしてこちらを見るものだから、触れていた手をぎゅうと握ってやった。

「痛いよ、もう!」
「お前がぼんやりしてるからだろ」
「白竜の意地悪」

機嫌を損ねたのかそっぽを向かれてしまうが、それでも俺の手を離さないのを見ていたら何だか可笑しく思えてつい笑ってしまった。