白咲と雪村




何故。と言われたら、理由なんて用意していない。ただ触れたかったからなんだと思う。

「…なぁ白咲、」

「なんで俺の手握るわけ?」

ほら来た、お決まりの問にどう答えるのが適切なのだろうか。
結局答えを探してぐるぐると思考を巡らせていたら返事のタイミングすら失って。繋いだ手から余裕の無い心がバレないよう必死に隠して。
不意に小さな溜め息が聞こえて、ちらりと視線を向けた。

「答えねぇなら別にいいけど」

自分とは違う白くて綺麗な手。小さな身体が寒さに震えたから、ぴたりと寄り添うように距離を詰めた。
触れた部分から分け合う体温は決して高い温度ではないけれど、それでも暖かかった。

「雪村、」
「何?」

「もう少し、このままでいいか?」

今度何故かと問われたら、寒いからだと答えよう。ゆっくり指を絡め繋ぎ直した手を引き寄せた。
嫌だと振り払われるかと思いきや、意外にもそんなことはなかったみたいだ。

「勝手にしろ」

素っ気なく言われたその言葉に内心喜んでいる自分、顔が緩みそうになるのを何とか抑える。単純に、嬉しいのだ。あまりの子供っぽさに笑ってしまいそうになるけれど今はそれでもいい。
許されたこの現状を、ただただ享受していた。